イギリスのフットボールクラブFGRにみるブランド戦略
2022.08.24
いま、僕らの会社が取り組んでいるお仕事の一つに「海外展開するための新しいブランドを作る」というものがあります。
(現在進行中のお仕事ですのでもちろん細かいところは書けませんが)
このお仕事=プロジェクト成功のための必要なこととして、環境問題やSDGsに関しての海外の事例やトレンドについて、事業チームの皆さんがしっかり認識してもらうことがあると思っています。
特に、SDGsや環境問題に関しては日本と海外の民度?の差がけっこう激しい。
海外では「必死」という感覚により近いイメージ。言葉を選ばずに言うならば、海外においてはSDGsや環境問題は「明日から自分の仕事なくなったらどうしよう?」的な、そういうレベルのものごとに近いような気がします。
一つ、事例をご紹介しようと思います
「フォレスト・グリーン・ローバーズ(FGR)」っていうサッカークラブがイギリスにあります。
イギリスのサッカーだと「プレミアリーグ」に所属するマンチェスター・シティやアーセナルっていう超ビッグクラブが有名ですが、FGRはそのイギリスで「EFL 1」というカテゴリーの実質3部のサッカークラブです。
・プレミアリーグ
(プレミア=1部の上、という意味)
↓
・EFLチャンピオンシップ
(実質2部)
↓
・EFL 1
(実質3部)
↓…
さらに続いて、イギリスでは実質21部まで!サッカークラブがあるそうです。
(調べてみると10部までで762クラブある。21部まで調べると恐ろしい数になりそうです)
<公式ホームページより>
このフォレスト・グリーン・ローバーズ(FGR)がなぜ?世界的に有名かというと、
◉ヴィーガン
◉カーボンニュートラル
◉地球上で最も環境に優しいプロサッカークラブ
で、あるからです。
サッカークラブなのにカーボンニュートラル(CO2の排出量が実質ゼロ)?
サッカークラブなのにヴィーガン?
どいういうこと???ってなりますよね。
そしてこのFGR、なんと今年の4月、わずか5シーズン目でリーグ1への昇格を決めたそうなんです。ヴィーガンとかカーボンニュートラルとか言っている変なクラブ(失礼!)がなんと上から3つ目のカテゴリーに昇格を決めた!
本業のサッカーも本気も本気、大まじめです。
<公式ホームページより>
フォレスト・グリーン・ローバーズ(FGR)では、選手のユニフォームは廃棄されたコーヒーのかすとリサイクルプラスチックで作られているそうです。クラブの運営に再生エネルギーが使われ、練習中やスタジアムではヴィーガン食を提供することが徹底されている。
新シーズンからはさらに、選手やファンの移動手段を見直していくそうです。FGRはモビリティプラットフォームのBoltと連携してファンに徒歩や公共交通機関を利用して試合会場に来てもらうよう促す活動を開始します。
選手たちのアウェイ試合への移動はゼロ・エミッション車が使用されています。今後、ルノー社のEVミニバスを購入し、ユースや女子チームたちの移動に活用する予定だそうです。
(『Positive News』World’s greenest football club kicks off season by tackling transport emissions より)
また、2019年に承認されたFGRの新しいスタジアムはザハ・ハディッド・アーキテクツによる設計の木造スタジアムになる予定だそうです。
ザハアディットさんと言えば、、、
東京五輪の新国立競技場の建設計画で「コストかかりすぎ」って叩かれて建設キャンセルになった有名建築家の方です。
FGRクラブオーナーのデール・ヴィンスさんは、
「環境の観点から見ると、スタジアムが生涯に排出する二酸化炭素の75パーセントは、スタジアムが作られる素材に由来しています。世界で最もカーボンフットプリントが低いスタジアムが誕生します」
と、インタビューで答えています。
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営利事業としてのサッカークラブ経営が成り立っている、ということは、このFGRの経営方針に多くの人々が賛同し、資本(お金)が集まっているということです。
お金だけじゃありません。ザハ・ハディッドみたいな世界的建築家を動かしてしまうほどのブランド力まで身につけてしまっている。
(2019年に建築計画承認っていうことは、少なくとも2017年にはザハ・ハディッドに設計を打診しているはず、その時点でザハ・ハディッドが動いた、ということです)
カーボンニュートラルクラブとして本業で成功を収めるだけでなく、事業全体の活動を通じてサッカークラブ、いや企業やブランドの新しい形を示しているのが素晴らしいなあ、と思います。
<公式ホームページより>
これぞまさに「ブランド力」なんだと思います。
ブランド力って、商品や製品でも、サービスでも、人材でも、営業力でも経営力でも、それらのどれとも違うと思うんですよね。
すごく平たく言うと、
問答無用で「それじゃなきゃダメ」って思わせる力
だと思ったりします。
例えば、ルイヴィトンのバッグを買っている人たちに(他意はありませんが)ヴィトンを買っている論理的な理由なんて、ないじゃないですか。
問答無用で思考停止させて人を動かせてしまう魔法のような力。それが「ブランド力」なのかもです。
で、このフォレスト・グリーン・ローバーズ(FGR)は、そのブランド力を世界の流れを読み切って”人工的に”作っている感じです。
サッカークラブの経営に、
「×世界初」
「×ヴィーガン」
「×カーボンニュートラル」
「×地球で最も環境にやさしい」
という掛け算を人工的に付け加えた。そうすると何が起こったか?
(日本とは違って欧米の環境トレンドの方が恐らくははるかに強い、という前提で)とんでもないブランド力が発生した。
更にそれだけに留まらず、世界的な建築家をして「ギャラは少なくてもいいから是非とも設計させてくれ」と動かしたんだと思います。
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ここから学べるのは、ブランド力は人工的に作れる、ということです。
ただ、それには自分がやりたいことだけやっていたのでは10,000%ダメで。
世界や社会の流れを読みきって、現状リソースに対して必要な掛け算を冷静に付け加えていく、そういう設計が必要なんだと思います。
世界において、そうは言っても、日本語はマイナー言語です。
日本語であるだけで拡散力は格段に落ちる。英語圏と日本語圏には大きな壁がある。
でも、だからと言って、グローバルな、世界的なトレンドを見て見ぬふりをする必要はないと思います。
海外に学ぶものがあるなら海外から取り入れればいい。拡散力という観点で海外が利用できるなら利用すればいい。それ以上でもそれ以下でもないと思います。
そのような論点で、海外進出がグローバル展開を考えたとき、例えばこのFGRの事例のようなビジネス事例などのような海外の環境問題事情やSDGs事情から、2022年の日本が学ぶべきものはたくさんあると思いました。
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この記事を書いた人
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株式会社MEETSHOPの取締役。得意なことは整理整頓と言語化。